日本で車を所有する場合、「車検」と「法定点検」という2つの点検が必要です。しかし、これらが何を意味し、それぞれがどのような役割を果たしているのかを十分に理解していないドライバーも少なくありません。この記事では、車検と法定点検の違いを解説し、なぜ両方の点検が車両にとって重要であるのかを探っていきます。
車検とは何か？
まず、車検について詳しく見ていきましょう。車検は正式には「自動車検査登録制度」と呼ばれ、日本国内で車両を運行するために法的に義務付けられている検査です。車検は車両が道路を安全に走行できるかどうかを確認するためのもので、主に以下の点に重点を置いています。
安全性の確保
ブレーキ、ハンドル、ライト、ウィンカーなど、車の基本的な機能が正常に動作しているかを検査します。また、タイヤの摩耗具合やサスペンションの状態も確認されます。
排出ガスの基準遵守
車から排出されるガスが法定基準を満たしているかどうかを検査します。これにより、環境への負荷を軽減し、規定された排出ガスの制限を守ることが目的です。
登録事項の確認
車両が登録されている内容に変更がないかを確認します。これは、車両の所有者情報や車両の仕様が変更された場合に重要です。車検は、新車の場合で3年、それ以降は2年ごとに実施される必要があります。車検が切れると、公道を走行することが法的に禁止され、違反した場合には罰則が科されるため、車検の更新を忘れないようにすることが重要です。
法定点検とは何か？
次に、法定点検について説明します。法定点検は、道路運送車両法に基づき、車両の所有者に定期的に行うことが義務付けられている点検です。法定点検には、12ヶ月点検と24ヶ月点検の2種類があり、それぞれ異なる項目がチェックされます。
12ヶ月点検
これは、毎年行うべき点検で、主に車両の基本的な機能や消耗品の状態を確認します。ブレーキの効き具合、タイヤの状態、ライトやウィンカーの点灯確認などが含まれます。
24ヶ月点検
24ヶ月点検は、車検と同時に行うことが多く、より詳細な検査が行われます。エンジンやトランスミッション、排気系統などの主要な部分がチェックされ、必要に応じて整備や修理が行われます。
車検と法定点検の違い
車検と法定点検は、どちらも車の安全性を確保するために必要ですが、その目的や内容には明確な違いがあります。
目的の違い
- 車検: 車検は、車両が道路交通法に適合しているかを確認するための公的な検査です。安全基準や環境基準を満たしていることを確認し、車両が法的に公道を走行できる状態にあるかを判断します。
- 法定点検: 法定点検は、車両の故障を防ぎ、安全に運行できる状態を維持するためのメンテナンスです。故障や不具合を未然に防ぎ、車の寿命を延ばすことが主な目的です。
頻度の違い
- 車検: 車検は、新車であれば3年、その後は2年ごとに実施されます。法定の期間内に行わないと、車両の使用が制限されるため、定期的な更新が必要です。
- 法定点検: 法定点検は、12ヶ月点検と24ヶ月点検があり、それぞれ年に一度、もしくは2年ごとに実施されます。法的に義務付けられている点検ですが、違反した場合の罰則は車検ほど厳しくありません。
内容の違い
車検: 車検では、車両の状態が法律に適合しているかを確認するため、点検項目は法定点検よりも少ないですが、より厳密な検査が行われます。特に、排ガス検査や外観検査など、規定に準拠しているかを確認する項目が含まれます。
法定点検: 法定点検は、車両のあらゆる部分を詳細に点検するもので、消耗品の交換や劣化部分の修理が行われます。特に、エンジンオイルやブレーキパッドなど、車両の性能や安全性に直接影響を与える部分が重点的にチェックされます。
なぜ両方が必要なのか？
車検と法定点検のどちらか一方だけではなく、両方が必要である理由は、車両の安全性を総合的に確保するためです。
車検の重要性
車検は、車両が道路交通法に適合しているかどうかを確認するためのものであり、公道を走行するために必須です。車検を受けることで、車両が安全基準を満たしていることが証明され、法的に車を使用する権利を得ることができます。
法定点検の重要性
一方、法定点検は、日常的な車両の維持管理を目的としており、車両の性能を長期間にわたって維持するために不可欠です。法定点検を怠ると、車両の劣化が進み、突然の故障や事故を引き起こすリスクが高まります。
両方を組み合わせることで得られる安全性
車検と法定点検を組み合わせることで、車両が常に安全で良好な状態にあることを確保できます。車検だけでは見落としがちな部分を法定点検でカバーし、逆に法定点検で気づかなかった重大な問題を車検で発見することができます。この相互補完的な役割が、車の安全性と信頼性を長期間にわたって保つために重要なのです。
最後に
車検と法定点検は、どちらも車両の安全性を確保するために不可欠な要素です。それぞれが異なる役割を果たしているため、どちらか一方だけでは不十分であり、両方を適切に行うことで、車両が安全かつ良好な状態を維持できるのです。定期的な車検と法定点検を欠かさず実施し、安心してカーライフを楽しんでください。
この記事の作成者
田中 総一郎
自動車業界の経済動向と市場分析に特化したライター。長年にわたり、自動車産業の発展とその影響について執筆しており、深い洞察力で読者に価値ある情報を提供。休暇中はオフロードの冒険を楽しんでいる。